「感覚統合」とは

 感覚統合(「Sensory Integration Approach」)は、アメリカの作業療法士エアーズが、1970年当時アメリカで問題になっていた学習障害児のための治療法として開発したリハビリテーションの方法です。
 日本には25年程前に導入され、主に軽度発達障害児に対して施行され、現在ではその他の障害にも応用されています。

 私たちが生活する環境は、様々な感覚情報に溢れています。私たちはその中で自分の体の動きや位置がどうなっているのかを感じること、見ること、聞くこと等の感覚を通して周囲の状況を知り、それにふさわしい動きを計画し実行します。そしてその動きが正しければ続行し、間違っていれば修正を加え、環境に応じた行動(適応反応)を行っていきます。
 感覚統合とは、環境に対して適応反応を起していく時の「体の内部や外から入ってくる多くの感覚刺激を脳の中で組織化し、まとめていく一連の処理過程のこと」をいいます。

感覚統合の発達4段階

 エアーズは、感覚統合の発達を4つの段階に分け、「触覚、固有受容覚(筋肉の感覚)、前庭覚(動きを感じる感覚)の基本的感覚が脳の中で統合されることにより、脳の中に身体知覚(体の地図)ができ、それをもとに運動企画(運動を組み立てる力)や注意の持続が可能になり、言葉や概念が発達し、自己統制、教科 学習等が達成されていく」と言っています。
 この感覚統合の過程に何らかの問題が生じると、多動であったり、自分の手足を動かすことが難しかったり、言葉の発達が遅れたりする等の行動、運動、学習の問題や、外界の刺激に対して適切な反応ができない為に、不安や恐れ、自信の欠如等の情緒的な問題等が生じてきます。

感覚統合の目的

 感覚統合の目的は、適応反応を導き出すことにあります。遊びや活動の中で、特に前庭覚、固有受容覚、触覚をコントロールしながら子どもに与え、その子どもの適応反応を自然に引き出せるように試みていきます。

対象となる子どもたち

  • 学習障害、ADHD、自閉症、知的障害
  •   >>落ち着きがない、不器用(文字が上手く書けない、箸操作が苦手等)、運動がぎこちない(縄跳びや走る動作がぎこちない等)、感覚過敏(べたべたした物に触れない、握手を嫌う等)、椅子に座り続けることが難しい(姿勢を保てない)等の主訴に対し、子どもに応じた感覚刺激を提供し、感覚刺激への適応的な行動を引き出していきます。

  • 脳性まひ、重症心身障害児
  •   >>自発的な反応を引き出し、生活のリズムの改善や情緒的安定等を図っていきます。

    指導の実際

  • 子どもの感覚統合障害の特性を掴む
  •   >>検査としては、①南カリフォルニア感覚統合検査、②南カリフォルニア眼振検査、③臨床観察、④JSI-R(JSI-Rは「感覚発達チェックリスト改訂版」とも言われており、発達障害児に見られる感覚刺激の受け取り方の傾向を探る質問紙です。)⑤日本版ミラー幼児スクリーニング検査等があり、面接や行動観察、発達検査等と併せて行います。

  • 具体的な指導
  • 【例1】
     体の使い方が下手で、縄跳び等をすると体の左右がばらばらになってしまう場合左右の動きを脳の中で統合できないのが原因です。まず、体の真ん中を意識するような活動から始めます。図3のようにロープ等につかまって揺れたり、ぶら下がったりします。次に体の左右を協調させて使う遊びへと展開していきます。

    【例2】
     触覚刺激や動く刺激に対して拒否が強く過敏傾向があり、遊びが拡がらない場合刺激を受け入れる力を高めていくことが必要となりますが、無理に挑戦させても改善できません。動く感覚の場合は、親と一緒に低い位置でゆっくりとした揺れの活動から始めます。また触覚過敏の場合は、すぐ手を拭けるようにタオルを準備し、本人の心地よい刺激から始めます。子どもの自発的な反応を大切にしながら促しましょう。