「TEACCH(ティーチ)」プログラムの概要

 「TEACCH(ティーチ)」とは、”Treatment and Education of Autistic and Communication handicapped CHildren”の略で、「アメリカ ノースカロライナ州で実施されている、自閉症等コミュニケーションに障害のある子供達やその家族への包括的対策プログラム」の名称です。


TEACCHプログラムの基本理念

  • 自閉症児・者が施設で生活するのではなく、それぞれの地域社会のなかで自立した生活を営むことができるようにする。
  • TEACCHプログラム は、不適切行動に焦点をあてるというより、適切な技能を発達させることを強調している。
  • 自閉症の人自身の適応力を高めると同時に自閉症の人にとって理解しやすい環境を操作する(構造化)とゆう2つの方向からのアプローチの相互性を重視している。


    TEACCHプログラムの7つの原則

  • 第1原則 子ども達の適応力を向上させていく
  •   >>色々なスキルを向上させる。
      >>子ども達をとりまく環境のほうに働きかけ、子ども達の欠陥を補っていく。

  • 第2原則 療育に対して親が共同治療者として協力する
  •   >>TEACCHプログラムでは、たえず親達の意見に耳を傾け、それをプログラムにいかしていく。

  • 第3原則 教育プログラムはそれぞれの診断と評価に基づいた、個別的なものでなければならない
  •   >>TEACCHプログラムで開発したフォーマルなもの(CARS,PEP,AAPEP等)と、インフォーマルな日常的な行動観察等の評価も組み合わされて実施され、生かしていく。

  • 第4原則 構造化された教育を行う
  •   >>子どものまわりの環境を適切に構造化することが、学習の効果を上げ発達上の欠陥をおぎなう。

  • 第5原則 子ども達のスキルを効果的に向上させるとともにそれぞれの欠陥をそのまま受け入れる
  •   >>欠陥を認識し、子どもの適応を向上させていく。

  • 第6原則 認知理論と行動理論を組み合わせて使う
  • 第7原則 療育者はジェネラリストでなければならない
  •   >>家族の参加を得ること、評価、構造化された教育法、行動管理、コミュニケーション.スキル、社会生活上のスキル、余暇に関するスキル、職業訓練、自立訓練、等の多領域の役割を果たせるスタッフであること。


    TEACCHプログラムで捉えている自閉症の特徴

  • 視覚情報が有効
  •   >>視覚から得る情報と聴覚から得る情報の処理能力に差がある。
       自閉症児には、視覚からの情報が有効であり、不適切な情報は、混乱を招く場合がある。

  • 細部に焦点を当ててこだわる
  •   >>同時に二つ以上の物事に対して集中することが難しい。
       全体の状況の中で一つの要素にだけ注意が集中してしまい、全体を統合したり、意味を幅広い手がかりで考えるということが難しい。

  • 時間や空間の組織化が難しい
  •   >>今が何時何分かということが分かっても、時間が経過しているということが理解しにくい。
       物事が始まり、順序、終わりが明確でない状態は混乱の原因となることが多い。
       また、求められる行動や展開される出来事がその場所と一体となって理解される傾向がある。ある場所でえ可能な行動を違う場所で求めても実施できない場合がある。

  • 感覚刺激への対応が困難
  •   >>感覚的な刺激の受け止め方及びその処理の仕方に困難性がある。
       同時に存在する視覚や聴覚等の感覚刺激を統合して理解し受け止める、ということが困難である。
       また、環境に対して整然とした秩序を非常に強く求めるという特徴がある。曖昧さや火各日な状態は混乱の原因となることが多い。


    自閉症の人が理解するための”6つの情報”と”構造化”

    【6つの情報】

    ① どこで(Where) 物理的構造化(環境の構造化) 等
    ② いつ(When) 時間の構造化(スケジュール) 等
    ③ 何を(What) ワーク・システム,視覚的構造化 等
    ④ どのくらい?いつまで?(How much) ワーク・システム,視覚的構造化 等
    ⑤ どのようなやり方で(How to do) ワーク・システム,視覚的構造化 等
    ⑥ 終了を理解。次に何をすれば良いのか?
      (What’s next)
    ワーク・システム

    【構造化】

    構造化の目的
    理解をサポートする
    分かりやすくする

    するべき行動を理解できる

    ストレス・混乱が減る

    不安を感じなくて済む

    問題行動を起こすことが減る
    混乱を未然に防ぐ
    自立するために、自分でこうするのをサポートする
    視覚的手がかりを使い、適切に情報に焦点を当てるのをサポートする
    情報に注意集中し、効率的な学習をサポートする


    ”構造化”メソッド

    物理的構造化
    (環境の構造化)
    部屋や作業所などの、家具・使用する物などの配置
     ●物理的、視覚的に分かりやすい境界を作る
      ・棚,家具の配置 ・絨毯や床材の色分け ・間仕切りカーテン 等 
     ●活動と場所の1対1の対応
      ・遊び,休憩の場所 ・作業,学習等の場所 ・おやつ,食事の場所 ・トランジッションエリア 等
     ●妨害刺激の除去
      ・不要なものを片付ける ・空間の調整,遮断 ・音や光,周囲の動き,時計の置き場所 等
    スケジュール
    (時間の構造化)
    どのような活動をどのような順序でで行うかを視覚的に示す
     ●個別化(一人ひとりに合ったものを作成することが必要)
      ・無理のあるスケジュールは続かない
      ・本人の理解力,生活ペース,行動範囲等を考慮する
      ・他人に合わせるためのものではない。本人が理解するためのものである。
     《一般的な提示例》
       具体物 >> 写真 >> 絵(イラスト) >> 絵と文字 >> 文字(単語) >> 文章
    ワーク・システム
    それぞれの場所で活動内容を組織化するためのシステム(自立的活動をするための情報伝達法)
     ●個別化(一人ひとりに合ったものを作成することが必要)
      ①何を(What)
      ②いつまで(How much)
      ③どのようなやり方で(How to do)
      ④終わったら次に何をするのか(What’s next)
    ルーティーン
    (習慣化)
    ●いつも、同じ手順で作業,学習(課題)を行う
      ⇒「上から下へ」「左から右へ」
    ●習慣化することで、普段の生活を安定したものにする
      ⇒例1)おもちゃを棚から出す >> おもちゃで遊ぶ >> 棚に戻す
      ⇒例2)鼻をかむ >> ゴミ箱に捨てる
    ●繰り返しているうちに学習する
    視覚的構造化
    システムは”目で見る形”にして分かりやすく
     ●視覚的掲示
      ⇒作業,学習(課題)を達成するための順序を視覚的に示す
       ・写真や絵による指示 ・出来上がりの見本 ・(作業)手順書 等
     ●視覚的明瞭化
      ⇒重要な情報を視覚的に強調する
       ・色やマークを付ける ・作業,学習や休憩所などの場所を区切る 等
     ●視覚的組織化
      ⇒材料や空間を組織する
       ・上から下へ ・左から右へ ・カゴの有効活用(材料などを容器ごとに分ける) 等


    ”構造化”の基本

    ①アセスメント
    ②構造化
    ③再アセスメント
    ④再構造化
    ⑤再々アセスメント


    ① 行動観察して仮設をたてる

    ② 安心してできる環境の構造化

    ③ 再び行動観察して仮設の検証

    ④ 本人の特徴により合った構造化





    “構造化”を行うためのアセスメント

    無理のない、楽しめる、機能的な内容を「効率的な」方法で構造化していくため、アセスメント(評価)は欠かすことのできない重要なファクターの一つです。

    [着眼点1]
     ・本人にできそうなこと ・作業,学習等の取り組み方 ・集中できる時間 ・気の散りやすさ 等
    [着眼点2]
     ・活動水準 ・現在持っているスキル,興味 ・変化への抵抗感 ・移動への不安の強さ ・言葉の理解度 ・説明の困難度 等


    TEACCHプログラムの”コミュニケーション・システム”

     TEACCHプログラムの最大かつ重要な特徴は、”ランゲージ(言語)・スキル”ではなく、”コミュニケーション・スキル”を教えるということです。
     子どものコミュニケーション能力を把握し、個別的な指導目標となるコミュニケーション・システムを選び、低機能の 症児には、言葉にかわるコミュニケーションをえらび、高機能の症児には、獲得しているコミュニケーションをより社会的かつ相互的なものにしていくことが、 重要な目標になります。

    レベル 1
    泣いたり、叫んだりして要求を表わす。
    レベル 2
    ジェスチャー(指さし、人をつれていくといった、直接行動)
    レベル 3
    物を使って示す
    レベル 4
    絵カード、写真を使う
    レベル 5
    文字を使う
    レベル 6
    サイン言語
    レベル 7
    表出言語(一般の人にとっても、わかりやすく非常に良い方法)


    「TEACCH(ティーチ)」プログラムの目標

  • できる限り広く理解されるようなコミュニケーション・システムを身につける。
  • 一人でスケジュールや日課に従うことができる。
  • 出来る限り高度なワークスキルを身につける。
  • 適切な社会的行動と対人行動を身につける。
  • 身辺処理の自立。
  • 余暇時間にためのレジャースキルを身に付ける。

  • 「TEACCH(ティーチ)プログラム」のメリット・デメリット

     私たちの日々構造化された社会の中で生きており、写真や絵(イラスト)等を用いて分かりやすく、何をする場所かはっきりさせることについては、それを自閉症児に分かりやすいレベルまで詳細化することで、自閉症児にとっても非常に分かりやすい方法と言えます。

     但し、中度や軽度自閉症児の幼児期後半は、かなり適応能力があります。そうした時期において、指導者がそれを認識して、構造化を緩めていく指導がなされないと、構造化されていない空間での生活ができない、など、一般社会に出ていく事への制約が出てしまう可能性もあると言われています。 
     また、TEACCH(ティーチ)プログラムは、本人が生きやすくする工夫をする一方で、言葉や物事を教え込むわけではないため、知的な遅れを取り戻したい人には、物足り無さを感じてしまう可能性もあります。